2017年登場が予定されているWindows 10搭載のSnapdragon端末は、Qualcommの勝利が確定したことを意味する

早い段階から独自コアを作ったQualcomm

Qualcommが開発したARMv7命令セットを採用する独自のCPUが搭載されたSoCのサンプルが出荷されたのは、2008年の冬でした。初のARMv7プロセッサCortex A8がアナウンスされたのが2005年のことですので、テープアウトまでの期間を考えるとQualcommは独自のCPUの開発はARMv7の発表の直後あたりから始まったと考えられます。このことからQualcommのスマートフォン向けプロセッサシリーズ「Snapdragon」はARM社のCortexに次ぐ開発の歴史を持つプロセッサであることが分かります。Qualcomm社はARM社とARMプロセッサの開発で対立してきたのです。

独自プロセッサやモデムを進歩させ、着々と市場規模を拡大してきたQualcomm

最初の独自CPUコアSnapdragon S1のフラッグシップの内蔵CPUとして発表された、Scorpionと呼ばれるものでした。65nmプロセスで製造された1GHzで動作するシングルコアCPUで、現在の基準で言えばかなり低スペックなCPUでした。Snapdragon S2に搭載されたScorpionは1.5GHzまでクロックを伸ばし、Snapdragon S3では1.7GHzデュアルコアとなりました。ここまでの進歩が2010年秋までに起こりました。

それからQualcommは更に性能を向上させたKraitコアの開発に着手します。Kraitコアのテープアウトは2012年春となりました。Kraitコアシリーズは200、300、400、450と性能を伸ばし、Snapdragon 805には2.7GHz駆動のKrait 450クアッドコアCPUが搭載されています。このCチップのサンプル出荷は2014年春のことです。

また、Scorpionと同時に開発が始まったGPUのAdrenoシリーズや、2013年からSnapdragonに搭載されはじめたDSPのHexagonシリーズなどもトップクラスの性能を維持しています。また、Qualcomm社のモデム領域での強さは有名で、第四世代移動通信技術としてLTEを流行らせた立役者とも言われています。

Snapdragonは現在殆ど全ての部分がQualcommが独自に開発したものとなっており、全ての分野においてトップクラスの性能を誇っています。LTE領域では独占状態を指摘されるほどの市場シェアを持っており。ARMアーキテクチャのモバイルプロセッサは既にQualcommの天下と言って良いです。

その最強の資金力を利用してQualcomm社は最先端のシリコン技術を使用したモバイルチップの制作に乗り出しています。Kraitの次のシリーズであるKryoはSamsungの14nm FinFET LPPを利用し製造されました。Snapdragon820/821に搭載されています。Kryoは6.3 DMIPS/MHzを誇り、821では最大2.34GHzで回るクラスタが2コア、1.6GHzで回るクラスタが2コアという構成になっています。

Windowsが搭載されるSnapdragon820の恐ろしさ

2016年の12月に開発されたWinHECで、Snapdragon820で動くWindows10が公開されました。Snapdragon820は主要な全てのコンポーネントがQualcomm独自のものとなっています。Qualcommには既にARMのCortexに頼らずに高性能なプロセッサを開発する土壌がありますし、ARMアーキテクチャのCPUメーカーとしてARM社と対等かそれ以上の地位を確立しています。

OSが対応しているかというのはエンドユーザーにとっては重要です。IntelはMS DOSが対応していたからこそ市場シェアを伸ばしました。QualcommのチップにWindowsが対応することで、省電力かつハイパワーを極めてきたQualcommがIntelと同じ土俵に上がることになります。ラップトップ市場に大きなインパクトを与えるでしょう。

私は、QualcommのチップにWindowsがきちんと対応していれば、Qualcommはラップトップ市場でも良い戦いをすると予想しています。スマートフォン向けのプロセッサ以外の市場を持つことで、Qualcommの資金力や開発能力はさらに高まるでしょう。スマートフォン市場、ラップトップ市場でシェアを獲得したQualcommを止められるチップメーカーは恐らく現れず、データセンター向けでも最大の市場シェアを持つと予想しています。Qualcommは第二のIntelとなるのです。

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