AMDが中国AliCloudと提携、サーバー向けGPU事業でnVidiaに対抗出来るか

AMDが中国AliCloudと、ワークステーション向けGPUシリーズ「Radeon Pro GPU」を活用するための業務提携を結んだことが明らかになりました。この発表ではHPC向けのFirePro SシリーズとRadeon Proを同一視していたことから、恐らくHPC向けのRadeon Proも考えている模様です。HPC向けのRadeon Proの開発に向けた動きと見て間違い無いかと思います。

Alibabaグループが力を入れているクラウドコンピューティング事業「AliCloud」

IoTやディープラーニングと共にクラウドコンピューティングも近年のIT界のバズワードの一つに数えられるでしょう。どこからでも高速なネットワークに接続出来るようになり、グループでクラウド上の開発環境を使うグループウエアという概念が生まれるなど、計算資源を貸すと言うビジネスは最早目新しいものでは無くなりました。近い将来、ノートパソコンなどのクライアント機は、高速なネットワークに繋がればそれだけでいいという時代が来るかも知れません。

オンライン上の計算資源はWebサービスという形で今までも多くの人に貸し出されて来ました。Webサービスは、ユーザーが接続出来るネットワークが高速化するにつれて出来ることが増えて行きます。近年ネットワークインフラの整備が進み、様々なWebサービスが生まれました。それにつれてオンライン上の計算資源の需要も伸び、今後もこのさらなる需要の増加が見込めます。クラウドコンピューティング市場は現在進行形で成長しているのです。

中国AlibabaはAmazonの「AWS」Microsoftの「Azure」を追う形で「AliCloud」に注力しています。拡大のスピードはものすごく、4年でAWSを抜くと言う目標を語っているほどです。数年後には本当に肩を並べ、三つ巴の様相が見られるかも知れません。

ディープラーニング市場の今

次に見込めるビッグマーケットの一つにディープラーニング市場があります。ディープラーニングは評価関数を作るための操作で、関数の作成の時に莫大な計算能力が必要です。運用のための計算コストは大きく無いので、開発時だけ巨大なサーバーを使いたいという需要が発生します。

ディープラーニングによって作りたい評価関数は様々です。製品のロゴが正しく印字されているか評価したい、この人の顔が写ったら認証を通したい、SNSへの投稿が何についてのものかを評価したいという需要もあるかも知れません。それが出来る関数が欲しい全ての企業が巨大なサーバーを持つのは非合理的ですし、パーソナルユースのコンピューターで何ヶ月もかけて一つの関数を作るのは馬鹿げています。そこでクラウドコンピューティングの出番というわけです。

さて、ディープラーニングは単純な計算を大量に繰り返すためGPUに向いた処理です。GPGPUのHPCへの応用で定評のあるnVidiaも近年はディープラーニングという語をよく使います。Tesla P100が倍精度の5.3TFLOPSでは無く、半精度の21.2TFLOPSを売りにしていたのは流石に驚きました。HPC向けのTeslaで倍精度の能力を売りにしていないということには時代の移ろいを感じざるを得ません。nVidiaのHPC部門においては、ディープラーニング市場でイニシアチブを取ることは最重要命題のようです。

AMDはディープラーニング向けGPGPU市場になぜ消極的なのか

このディープラーニングのビッグウェーブに対してAMDの動きは小さいように感じます。AMDのHPC向けのGPUコプロセッサのフラッグシップはAMD FirePro S9300 x2ですが、その製品紹介ページにはdeep learningの文字はありません。まるでHPC市場を捨てるつもりかのようです。

GCNアーキテクチャはそもそもGPGPUを念頭に置いて作られています。近年Linux向けのドライバをオープンソース化し、いよいよ本腰を入れるのかと注目していましたが、現在の状況でディープラーニング市場にアプローチをしないのはHPC向けのコプロセッサ市場を捨てるのと同義です。AMDは何を考えているのでしょうか。

AMDとAliCloudとの業務提携を踏まえAMDが見据える先を考える

AliCloudは例に漏れずディープラーニング市場を押さえて行きたい考えのようで、そのためのサーバーとして既にTesla K40を用いたGPGPUサーバーを用意しています。AliCloudがAMDに求めるものはバーチャル・リアリティ(以下VR)やバーチャル・デスクトップ・インフラ・ストラクチャ(以下VDI)などについてのソリューションのようです。

サーバー向けGPUとしてのAMDの強みは、ハードウエアでの仮想化が行える点です。マルチユーザーで演算資源を効率的にシェア出来るので、一ユーザーが高負荷で使うHPC向け用途で無ければ商機はあるでしょう。特にVRサーバー市場は向こう10年で大幅な需要の増加が見込めるマーケットです。おそらくAMDの見据える先はそこで、絶対的な性能だけでなくサーバー事業者のニーズに答えられるサポートを充実させるためにAliCloudと提携を結んだと読むべきでしょう。