神威太湖之光はどこを向いているか

天河二号がXeon Phiを使用しTOP500で世界一を獲得し、Xeon Phiの中国の公的機関向けの輸出が止まった中で、TOP500 No.1として登場したのが、制御用プロセッサを除く全てのプロセッサが中国製の神威太湖之光です。Intelビビってるなどと紹介され、多くの人が中国の技術力を知ることとなりました。

汎用スパコンとしての出来の悪さ、汎用アクセラレータとしての出来の悪さ

神威コアにまず始めに言えるのは、汎用性の低さです。半精度はおろか単精度まで捨ててしまった神威コアは、例えば今後伸びてくるであろうDeep Learning市場を掴めません。この点だけを挙げても神威はIntelやnVIDIAのライバルにはなり得ません。高精度なCADなどの用途が挙げられていますが、単精度演算は様々な産業用ソフトでも使われるので、産業用のコプロセッサとしてもあまり良いものではありません。広く使われているCUDA環境などをディスラプト出来るとは到底思えません。

科学技術演算専用として見れば神威コアは良いものなのかも知れませんが、科学技術演算に対する市場だけではIntelを脅かすような規模にはなれませんし、規模が小さければプロセスルールの微細化について行くことが出来ず、電力対性能比でも負けてしまうでしょう。

また神威太湖之光はスクラッチパッドと言う特殊な形態のキャッシュを採用していて制御が難しく、コヒーレンシが取れているのかと言う疑問点もあります。もし取れて居ない場合、科学技術演算用途の中でも限られた用途にしか使えないと言うことになります。

なぜスクラッチパッドなのか

発表された当時、神威太湖之光と神威コアの意図が読めませんでしたが、その答えは神威の特徴的なアーキテクチャの一つであるスクラッチパッドにあるのでは無いかと気が付きました。

そもそもスクラッチパッドとは何でしょうか。スクラッチパッドとはSRAMよりもシンプルなキャッシュの形態で単なるフリップフロップが組み込まれているような形のメモリです。明示的にメモリ番地を指定出来る特徴を持っています。

現代的なプロセッサでスクラッチパッドメモリを採用している例は少ないですが、キャッシュメモリの歴史では、常に議論のあった方式です。この方式はストリームコンピューティングに向いていると言う評があります。ストリームコンピューティングとは、通常よりもリアルタイム性の高いコンピューティングのことです。

例えばリアルタイムに生成されるデータから意味のあるデータを掘り当てる。と言う演算はストリームコンピューティングの一つと言えます。そのような用途、つまりセンシングとビッグデータの解析と言う用途を考えた場合、神威コアのアーキテクチャはしっくり来るのです。

神威太湖之光を語る上ではGraph500が重要

神威太湖之光を語る上で最も重要なベンチマークランキングは何でしょうか。上記の議論から導き出される答えは「Graph500」でしょう。

Graph500とは、ビッグデータ解析の能力を測るベンチマークランキングです。神威太湖之光はそのランキングで2位と好成績を残しています。IBMのフラッグシップマシンと言えるSequoiaに競り勝つ好成績です。

Deep Learning市場を掴めないと先ほどは申しましたが、恐らくDeep Learning市場は見ていないのでしょう。やはりIntelやnVIDIAをビビらせる気など無いように思えます。その代わりに狙っているのがビッグデータ解析市場と言うわけです。そもそも戦っている土俵が違うのです。

なお、神威太湖之光のGraph500でのスコアは、Xeon Phiを使用した同程度の規模のシステム天河二号の11.5倍です。ビッグデータ解析市場ではIntelは敵ではありません。

Graph500の上位はこれまで、日本の京とIBMの製品に埋め尽くされていました。日本の場合セールスが控えめで、それほど大きな市場規模を持つに至りませんでしたが、中国の神威コアはどうなのでしょう。新たな勢力の登場にビビってるのはIntelではなくIBMでしょう。

宇宙開発と神威太湖之光

中国は宇宙開発にも積極的な国です。現代的な天体観測施設はリアルタイムにとてつもない量のデータを吐き出すため、その解析にはリアルタイムにデータを取り込み、リアルタイムに解析するストリームコンピューティングが必要になると言えます。今後より一層宇宙開発に力を入れるために神威コアのフラッグシップマシンを作ったのかも知れません。

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