nVIDIA VS Intelはどんなシナリオを描くのか

テック・ジャイアント

nVIDIAやIntelがとてつもない技術力を持っている大企業であることに、異論のある人は居ないでしょう。この二社の動向には世界中が注目しています。この2つの「テック・ジャイアント」は近年HPC向けのコプロセッサの分野で競合し、しのぎを削っています。このIT界の巨人同士の戦いは一体今後どうなるのでしょうか。

Tesla P100は既にGPUでは無い

nVIDIA社はGPUの設計をHPC向けコプロセッサへと流用することで開発コストを下げて来ました。しかし近年、この順番が逆転しつつあります。近年のnVIDIAの動向を見るに、HPC向けの設計をGPUに流用しているような、そんな印象を受けます。

現に、nVIDIA社はTesla P100をリリースしてからPascalアーキテクチャのGeForceを出しました。PascalアーキテクチャのGeForceは、Teslaの数値演算機能を制限したようなボードとなっています。機能を制限した分廉価になっていると言うわけなのでしょう。現在のnVIDIAが本気を出して開発した製品はTeslaであり、HPC向けのコプロセッサから開発をしていると言う印象があります。

さて、GPGPUと言う言葉がありますが、TeslaはGPUなのでしょうか。私には単なるコプロセッサに見えてなりません。グラフィックスに重要な単精度浮動小数点数演算(FP32)が特別強いわけでも無く、コプロセッサとしての制御機能も充実しています。私は、既にTeslaはGPUと呼べるものでは無くなっていると感じています。そしてこれからもコプロセッサとしての機能は充実していくのでしょう。

HPC向けコプロセッサメーカー「nVIDIA」

前述した通り、私はnVIDIAをただのGPUメーカーとして捉えて居ません。nVIDIAにはHPC向けコプロセッサメーカーとしての顔があるのだと認識しています。HPC向けプロセッサメーカーとして見た時のnVIDIAは、果たしてどう評価すべきでしょうか。

まずnVIDIA Tesla P100のコプロセッサとしての能力ですが、これは世界最高峰の性能と言って良いです。GPUはFP32だけが出来ればそれでこと足りるのですが、TeslaはFP16やFP64の能力も優れています。演算能力がスケーラブルなのです。「FP64:FP32:FP16=1:2:4」の理想的なスケールをします。

またTesla P100のメモリにはHBM2が採用されていて、帯域幅は700GB/s超えと異次元の数値を叩き出しています。メモリ帯域が問題になる昨今のHPCにもきちんと配慮された設計になっていると言えます。FP16などの低精度の演算能力が重要となるニューラルネットワークを用いたディープラーニングまで、FP64などの高精度演算が重要となる科学技術演算一般まで活躍出来る能力を持っていると言えます。nVIDIAは既にHPC向けコプロセッサメーカーとして超一流なのです。

Intelの猛追

IntelはIT界で最も力のある企業と言って良いでしょう。x86の時代を築き、PC/AT互換機の大流行と共に、時代のトップを走るプロセッサメーカーとなりました。Intelは当然HPC界を支配しようと動いているのですが、最近になってその動きが激化しています。それを象徴するのがXeon Phiの登場です。

Xeon Phiとはx86アーキテクチャのメニーコアプロセッサです。現在最大でプロセッサ辺り72コアとなっています。本家のXeonが最大で20コア程度なのに対して、大幅にコア数の多いプロセッサとなっています。

IntelはXeon PhiでHPC界やサーバー界を支配しようと画策しています。何せx86ですので、ソフトウエア資産は豊富です。能力的にもかなりのものを持っていて、とてつもなく有望視されているコプロセッサです。またXeon Phiはメインのプロセッサとしても動作が可能で、単体でLinuxが動くようになっています。

既に第一幕の結果が出始めたnVIDIA VS Intel

先日発表されたTOP500には、Xeon Phiの第二世代KNLを使用した日本とアメリカのスーパーコンピューターシステムがランクインしていました。Xeon Phiは既にスーパーコンピューターでの実績を貯めつつあります。また同ランキングには、新たにTesla P100を搭載したスイスのPiz Daintもランクインしています。既にHPC業界では、この二体の巨人がしのぎを削っています。

TOP500においては、Xeon Phi KNLのシステムは5位と6位にランクインしており、Tesla P100のシステムは8位のみにとどまっています。これだけを見れば、Xeon Phiに軍配が挙がったと分析が出来るでしょう。しかし、省電力ランキングのGreen500を見てみると、1位と2位がTesla P100のシステムとなっています。2位についてはTOP500でも8位のPiz Daintです。一般に、HPCシステムの省電力性能は、大規模になるほどプロセッサ以外の部分で電力を消費するので不利になると言われています。TOP500 8位とGreen500 2位を同時に取ると言うのはなかなかすごいことです。省電力性能ではTesla P100に軍配が挙がっていると言えそうです。

また、現在最も科学技術演算におけるHPCシステムの性能を表してると言われている、HPCGというベンチマークを見ると、面白いことが分かります。3位と5位にXeon Phi KNLのシステムがランクインしているのです。Piz Daintは13位となっています。科学技術計算においては、Xeon Phiに明らかなアドバンテージがあると言えるでしょう。

今後の予想

ディープラーニング市場ではTeslaが、スーパーコンピューター市場ではXeon Phiが優勢になっていくと考えています。

nVIDIAは現在ディープラーニングにとても力を入れており、既にGPGPUを用いたディープラーニング用のフレームワークが多数存在しています。ニューラルネットワークはそもそもの発想として、簡単な処理を多段化することでAIの認識精度を上げていくと言う手法なので、Xeon Phiの取り回し安さはあまり生きてこないかと思います。

しかしXeon Phiの持つ柔軟性は、様々なアルゴリズムを用いて課題に立ち向かう科学技術計算用の汎用スーパーコンピューターには無くてはならない要素です。スーパーコンピューター市場では今後もXeon Phiが流行り続けて行くでしょう。

Post KからARMメニーコアの大ヒットと言うシナリオ

Post KからARMメニーコアが流行り、強力な第三勢力となるシナリオもあり得るかと思います。Post Kプロジェクトで、かつて無いようなスーパーコンピューターシステムが出来上がれば、ARMプロセッサはGPGPUが流行った時のGPUの状況と同じような状況となります。

GPGPUがなぜ流行ったかと言えば、廉価だったからです。なぜ廉価かと言えば、GPUはゲーム市場と言う巨大市場を抱えて居たからです。このスケールメリットこそがGPGPUの大流行の鍵だったのでは無いかと考えています。また、それに加えてGPGPUにはアメリカのTitanというフラッグシップと言えるスーパーコンピューターシステムが存在していました。フラッグシップの存在も、知名度を上げていく上で重要な要素だったと言えるでしょう。

ARMはモバイル市場を支配しています。Post Kというフラッグシップが登場すれば、もしかしたらHPC向けコプロセッサ界にARMという波が起こるかもしれません。

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