日本で最もアツいプロジェクトPost Kに米ケイデンス社の大規模回路エミュレーションプラットフォームを使用することが決定

日本のIT界で最もアツいプロジェクト「Post K」

Post Kの動向を見守っている人は多いでしょう。ARM社と協力して設計したHPC向けのカスタムARMプロセッサを使用する最大規模のスーパーコンピューターPost Kは、HPC、大規模サーバー業界などでのARMプロセッサの発展を占う事業でもあります。

モバイルチップは極めて悪い電力状況下で進歩を遂げ、ここまでのエンターテイメントを提供できる製品となりました。電力効率がものを言うサーバー業界では競争力のあるプロセッサです。ソフトウエアへの対応についても、Linuxコミュニティの間でARMプロセッサは注目度が高く、速いスピードで対応して来ています。

富士通はLinux foundationのプラチナメンバーでもあります。その富士通が大規模サーバーのフラッグシップであるスーパーコンピューターをARMアーキテクチャで作ると言うことで、LinuxのARM対応は益々加速するでしょう。

私はPost KプロジェクトでARMプロセッサは大規模コンピューティングにおける爆発的ヒットに必要な条件が全て揃うことになると見ています。別の市場で確保しているスケールメリット、現行のプロセッサに対するアドバンテージ、そこにフラッグシップと高度なソフトウエアが加わります。スーパーコンピューターTitanを発端にGPGPUが流行り出した時と同じような流れがあるのでは無いかと思います。

ARMプロセッサとx86プロセッサの提供プロセスの違い

ARMプロセッサとx86プロセッサの最大の違いはその提供プロセスです。

旧来のx86プロセッサの提供プロセスにですが、基本的には自社内で開発し自社内で製造し販売します。AMDはGFとしてファウンダリ部門を独立させていますが、提供されるまでに関わっている企業は大企業一社とその系列企業です。

一方ARMプロセッサは全く違います。ARM社が設計したCPUやGPU、メモリコントローラー、インターコネクトなどを、チップベンターが買い、適切につなぎ合わせ、それをシリコンチップのファウンダリに発注してプロセッサが出来上がります。自社でファウンダリを持つSamsungのような企業もありますが、概ねこのような流れでチップが出来上がります。

この提供プロセスには様々なメリットがあります。ARM社はプロセッサを設計した時点でそれを売ることができ、そのお金をさらなる開発に投じることが出来ます。利益の確定が速くARM社のプロセッサの開発サイクルを早めます。

設計を買うチップベンダーにもメリットがあります。莫大な開発予算を投じなくても自社製の高性能なチップが出来てしまうということです。プロセッサは途方もなく大規模な回路なので、その開発予算を出せる企業と言うのは相当な地力のある企業です。x86プロセッサ業界にはIntelやAMDがいるので、手を出そうと言う企業はなかなかありませんでした。ARMプロセッサを作る企業が多いのは、その参入のしやすさに由来しています。

開発環境はどうか

プロセッサの開発環境についてはどうでしょうか。プロセッサの開発はコンピューター上で行われています。ハードウエア記述言語で記述した回路をインスタンス化し、テストデータを記述してデバッグするという行程が一般的のようです。

超大規模な回路の場合、この開発工程に様々な問題が生じます。回路のコンパイルにもそのエミュレーションにもとにかく時間が掛かり過ぎるのです。まともにCPUを開発しようと思うとそのために大規模なワークステーションを用意する必要が生じます。

開発環境を専用のワークステーションとして販売しているのが、米ケイデンス社です。専用設計なので電力効率がとても良く、現在最大手となっているようです。モバイルのSoCの他にも、nVidia社のGPUに設計にもケイデンス社の開発環境が利用されているようです。

Post Kにケイデンス社製の製品が使われることが明らかに

Post Kにケイデンス社製の回路エミュレーションツールPalladium Z1が使用されることが明らかになりました。国の税金がかかった事業に国外の製品が使われるということになるのであまり嬉しい話では無いのですが、ケイデンス社のPalladium Z1の性能は圧倒的です。CPUなどの超大規模なプロセッサの設計には、速い回路のコンパイルと速いテストの実行、正確な分析が必要不可欠なので、最高の開発環境を買うのは残念ながら当然なのでしょう。

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