スーパーコンピューターランキングTOP500の現在の上位10システムを紹介 10位-5位

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10位 サウジアラビア キングアブドラ大学「Shaheen II」

10位はサウジアラビアのキングアブドラ大学が所有するShaheen IIです。サウジアラビアからのランクインと言うことでランクイン当時話題になりました。理論ピーク性能は7.2352 PFLOPSで、LINPACKベンチマークは5.536 PFLOPSです。システム全体の消費電力は2,834 kWです。

このスーパーコンピューターはCray社のXC40システムです。このシステムはパワーがあることに加えてCray社の持っているスーパーコンピューター向けのソフトウエア群「CLE(Cray Linux Environment)」が使えます。殆ど全て設計済みと言うことですね。プロセッサは2014年Q3(第三四半期)発表の16コアXeon E5-2698V3で、コア数は全部で196,608個あります。Xeonプロセッサ数に直すと12,288個です。

9位 ドイツ HLRS「Hazel Hen」

ドイツのHLRSというコンピューティングセンターの所有するスーパーコンピューターHazel Henが9位です。理論ピーク性能は7.4035 PFLOPSでLINPACKベンチマークは5.6402 PFLOPSです。

このスーパーコンピューターもCrayのXC40システムで構成されていますが、このシステムは10位のShaheen IIよりコア数の少ない12コアのXeon E5-2698V3プロセッサを使っています。コア数は185,088個あります。Xeonプロセッサ数に直すと15,424個です。26%程度規模が大きくなっているので、公表はされていませんがシステム全体の消費電力は10位のShaheen IIよりかなり高いと思われます。

8位 スイス CSCS「Piz Daint」

8位はスイス国立スーパーコンピューティングセンターCSCSのPiz Daintです。理論ピーク性能は7.7889 PFLOPSで、Linpackベンチマークは6.271 PLOPSです。システム全体の消費電力は2,325 kWです。

このスーパーコンピューターはCrayのXC30システムで構成されていて、SMXコア14個のTesla K20Xとx86コア8個のXeon E5-2670がそれぞれ5272個づつあり、合計115,984個の演算コアがあります。GPGPUシステムにも関わらず実効効率が80%を超えています。2012Q1発表のXeonと2012Q4発表のTeslaという若干古いスーパーコンピューターですが、消費電力が小さく、性能が高いです。

SMX:単精度 CUDA コア 192 個、倍精度ユニット 64 個、特殊関数ユニット(SFU)32 個、ロード/ストア・ユ
ニット(LD/ST)32 個

7位 アメリカ LANL 「Trinity」

7位はアメリカロスアレモス国立研究所LANLのスーパーコンピューターTrinityです。理論ピーク性能は11.0789 PFLOPSで、Linpackベンチマークは8.1009 PFLOPSです。

このスーパーコンピューターもCray XC40です。プロセッサは10位のShaheen IIと同じE5-2698V3ですが、コア数は301,056コアなので53%ほど規模が大きいです。Linpackベンチマークは46%ほど高いのでShaheen IIを1.5倍にしたシステムと言えるでしょう。

LANLは第二次世界大戦の時代から核開発の拠点となっていた研究所で、Trinityはマンハッタン計画の主要な核実験であるトリニティ実験が名前の由来となっているのでしょう。日本人としてはあまり気持ちのいい名前では無いですね。

6位 アメリカ アルゴンヌ国立研究所 「Mira」

6位もアメリカのスーパーコンピューターです。アルゴンヌ国立研究所が所有しています。理論ピーク性能は10.0663 PFLOPSで、Linpackベンチマークは8.8566 PFLOPSで、システム消費電力は3,945 kWです。

このシステムはIBMのPowerコアを使ったIBMのスーパーコンピューターシステムBlue Geneの第三世代Blue Gene/Qのシステムです。つまりIntel入ってないシステムですね。2011Q4でアナウンスされた製品で当時世界で最も先進的なシステムとされていて。2012年6月にBlue Gene/QのSequoiaがTOP500一位、Graph500一位、Green500一位の三冠を達成しました。

使われているプロセッサは16のPower A2コアを備えるPower BQCというプロセッサです。256bitのFPU対応のSIMDで、コアあたり倍精度浮動小数を4つ同時に処理出来ます。また、メッセージパシングを前提に作られたシステムで、デファクトスタンダードとなっているMPIで高い実効効率を得られます。チップ内でプロセッサの連携が取るために5次元トーラスインターコネクトを実装しています。トーラスインターコネクトとはどちらの方向に行っても一周して戻ってくるネットワークのことで、5次元ということなのでそれが各コアから5方向に伸びているということをイメージしてください。IBMの持つ技術の粋を集めた、純粋なスーパーコンピュータ向けのプロセッサがPower A2コアのPower BQCです。

5位 日本 理化学研究所 「京/K」

日本の誇るスーパーコンピューター京は5位ランクインです。毎秒一京回の浮動小数点数演算能力(=10 PFLOPS)を目標としたスーパーコンピューターであることが名前の由来です。日本では京と呼ばれることが多いですが、海外ではKと一文字で表すことが多いようです。理論ピーク性能は11.2804 PFLOPS、Linpackベンチマークは10.510 PFLOPS、システム全体の消費電力は破格の12,660kWです。

日本の京に関しては日本国内でも賛否両論あります。消費電力が大きい割に性能が出ていないと、TOP500の数値だけを見るとそう評価せざるを得ません。しかしこのスーパーコンピューターは、様々な点でとてつもないです。

まず第一に、10PFLOPSが目標なのに11.2804 PFLOPSしか用意されていない点です。つまりハードを設計した時から、Linpack実効効率88.65%は出るだろうと世界最高レベルの効率を見積もっていたと言うことです。本当にもし10 PFLOPS出なかったらどうするつもりだったのでしょうか。

実際のLinpackの実効効率は93.17%です。これは10位までの世界トップクラスのスーパーコンピューターの中では最高の数字です。なにか間違っているんじゃないかと思わず疑ってしまいたくなるような数字です。

京の凄まじい点を挙げるとすれば、ハードウエアの実効効率に尽きると思います。TOP500の数値はあくまでLinpackベンチマークで行われる単純な計算での計算能力であって、実際に動くプログラムがそのスピードで動くわけではありません。様々なプログラムにおいて実効効率を稼ぐことにおいては、京は現在でも世界一です。

その証拠はいくつか上げられます。まずGraph500というビッグデータ解析に近いプログラムを走らせるベンチマークのランキングでは1位を獲得していますし。より様々な角度から検証するHPCGというベンチマークでは、1位の天河二号0.580PFLOPSに肉薄する0.5544 PFLOPSで2位を獲得しています。天河二号は理論ピーク性能が54.9024 PFLOPSもあるので絶対性能では流石に負けていますが、効率で言えば軽く抜いています。

ポスト京のプロジェクトチームはポスト京について、TOP500にフォーカスせず、実際のプログラムが速く動くように設計すると宣言していますが、京は違うのかと言いたくなります。

京といえば民主党政権時代の事業仕分けで、蓮舫議員の「二位じゃダメなんですか」という賛否両論ある名言を産んだことでも有名です。もし京がただ10 PFLOPSを狙うマシンであれば、明らかに予算は過剰だったと思います。京の開発費は1120億円もかかっています。京が世界一になった次の年のランキングで、17.59 PFLOPSを出して1位になったアメリカGPGPUスーパーコンピュータTitanの開発費は76.5億円です。この数字だけ見ればどう好意的に見ても過剰な予算でしょう。

これに対する擁護論は主に2つあります。

一つは日本の独自プロセッサであることです。アメリカは基礎研究を含む科学技術研究のプロジェクトに向けて毎年大量の予算を付けてバックアップしてきました。そしてスーパーコンピューター市場の最大のカスタマーであり続けて来ました。結果としてアメリカではプロセッサメーカーがぐんぐん育ち、その恩恵でスーパーコンピューターが安価に作れるようになりました。アメリカが今までスーパーコンピューターに間接的に投資してきた額に比べれば1120億なんて安すぎるくらいだと言えます。

もう一つは、これは発表当時は私は全く知りませんでしたが、京がただLinpack 10 PFLOPSを達成するだけのコンピューターでは無かったと言うことです。京は現在でも、様々な科学技術計算で世界で戦えるだけの実効性能を出しうるスーパーコンピューターです。おそらくこの先も世界の第一線で戦い続け、ポスト京が2022年に出るまでの合計10年強の間を同じスーパーコンピューターで戦うことになるでしょう。

スーパーコンピューターと言うとハードウエアばかりが注目されがちですが、実際はソフトウエア的に効率を引き出す作業が重要だったりします。京は全く新しいスーパーコンピューターであるにも関わらず、それをたっぷり10年続けるのです。ソフトウエア資源は今後、ポスト京に受け継がれ日本のHPCの地盤をより強固なものにします。京のプロジェクトはハードウエアを作るものではなく新しい文化を作るものだったということです。

4位-1位

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